株式会社 美萩工芸

  • 先人

代表取締役 小野 博巳さん

会社名
株式会社 美萩工芸
桐箱から木箱へ

よく工芸品や食品の贈答品などに木箱が用いられておりますが、当社はその木箱を製造販売しております。
私は、元は地元の銀行マンでしたが、1996年にこちらへ転職をして、2007年に当社の代表取締役に就任し、今に至ります。
1971年に「萩桐箱店」を開業したのが当社の始まりです。1992年に株式会社美萩工芸として法人化しました。

当社は、私がいた銀行の取引先だったのですが、銀行マン時代は「急成長した優良企業」というイメージをもっていました。急成長の理由は、木箱の製造販売をしている企業には珍しく全国展開をしたことにあるのでしょう。
会長の横田は、地元の名産である萩焼の桐箱からスタートさせ、次第に萩市だけではなく、陶器はもちろん、漆器やガラスなどの伝統工芸の産地へ営業を行いました。また、その頃は、工芸ブームで業績が伸びていき、美濃焼の岐阜県多治見市、輪島塗の石川県輪島市、会津塗の福島県会津若松市に営業所を順に開設していきました。

業界の異端児

しかし、2000年を過ぎてからは工芸ブームが下火になり、それに代わるものとしてお節料理の木箱製造を始めるようになりました。
それまでのプラスチック製よりもコストはかからず、高級に見える。また、木は呼吸をするので料理にもいいのです。
今では、お節料理用のものがかなりのシェアを占めており、この他にワインなどの酒類用といった食品関係と開業当時からの工芸用の両方を手掛けています。

食品と工芸用の両方を製造していることも当社の特長ですが、卸売はせずに製造直売のスタイルは競合他社との大きな違いです。
代理店を通せば何事も早いのかもしれませんが、間接的では、エンドユーザーの声が私たちに届いてきません。直接的であれば、私たちは製造もしますから、オーダーがあればすぐに改良することができますし、中間コストもかかりません。
ただ、営業所がなければその地域が固定化していかないので、法人化後、札幌から福岡まで全国7か所に設けました。自分の足で売っていかなければなりませんが、しがらみがないのでどこへでも伺えるという強みがあります。業界内では異端児かもしれませんが、一旦、繋がったお客様とはお付き合いが長いです。8,000件くらいの顧客があって、一社の大口には頼らないようにしています。

木箱業界を取り巻く環境

当社が使用する材木は、桐だけではなく杉やモミ、インドネシア産のものがあって80%が輸入材です。
「自然との共生」を当社のスローガンにしていますが、PEFCという森林認証制度の認定を当社は受けています。世界中で違法伐採が多発していますが、このPEFCは、違法伐採をしていないという証明です。

例えば、当社が取引しているドイツ産の場合、ドイツの木こりから始まって、輸入業者、製材業者、そして最後の当社まですべてがPEFCの認定を受けたところで連携がなされています。つまり、トレーサビリティが明らかになっていて違法伐採の木は扱っていないということです。当社は、国産杉も同様にしています。
また、PEFCは、自然を破壊しないという考えが根底にあります。森の木は適度に間引いて次の木が生えてくるようにしなければいけません。古い木から切って、植林は一切せず、実生の木が育つようにしています。外国の関係者が日本の山を見ると木がびっしりと並んでいることに驚きます。

日本は、林業が衰退し、担い手がいません。だから、間引くことも枝打ちもできなくなり、木の状態が悪くなります。また一方では、家屋に木を使わなくなり需要も減少して、私たちの木の世界は、悪循環に陥ってしまっています。

伝統のなかの新しさ

当社の従業員は150人ほどおります。萩営業所と萩生産工場はほとんどが萩在住者で、東京本社や他地域の営業所は現地採用です。
従業員の大半は工場勤務で、現場は、会長の横田が指揮しています。
工場内は、資材管理・製造・梱包・在庫管理の4つの部門になります。製造部門は、伝統工芸と食品の二つのラインがあり、伝統工芸用はオーダーメイドで職人仕事です。良質な材木を使用するようにもしていますから、一箱が数万円もします。
工芸品用は大きさや形などの仕様が一つ一つ異なるので、すべて手作りで、それぞれに合う箱を心がけています。

一方、食品用は量産ができるように機械化をしています。3つの工程で、はじめはコンピュータ制御の鋸で材料を切る。そして、切った材料を組み立て、最後に紙やすりで整えたり、エアガンでゴミを払ったりなど仕上げをします。
こうした作業の中、箱作りも日本の伝統産業で、後世に引き継いでいくことは当社の使命だと当会長は言います。
しかし私たちは、ただ伝統を引き継ぐだけではありません。たとえば、男の仕事とされている電気のこぎりや鉋の扱いを、女性従業員から希望があればチャレンジしてもらうようにしています。女性は、包丁を使う人が多いから上手ですよ。

また、Uターンや就職した従業員や、若い従業員も多くいます。他社の方が来社されて工場をご覧になると驚いていますが、女性の活躍や若者の姿は伝統産業には珍しいのでしょう。
また、材料も木だけではなく、マメ科の大きな植物の茎を何枚も重ね合わせた板状のものも使用しています。節はないですが木のように見える材料で、インドネシアから仕入れるなど新しい取り組みもしています。

シェアを伸ばしていきたい

工場には製造ノルマがあります。
私は、ふだんは東京本社におりますが、月に一回萩に帰ってきて、そのノルマを達成してもらうために責任者を招集して会議を行っています。生産するものにとって納品日は第一。受注数と日数を割り算して納品日に間に合うよう納期管理をしなければなりません。
積み残しがあるようでは倒産の危機を招きますから、先に先に作って倉庫で保管できる体制をとっています。

当社の木箱は単価が安いため、量産しなければならなくなります。だから当社は倉庫だらけです。木箱は床ではなく底上げしたところに積み、カビが生えないように送風機をフル回転させています。
また、食品用は機械化をしているとはいえ、工芸で磨かれた技術やノウハウがあったからこそできたことです。
釘を使えば生産は早くて簡単なのですが、食品用の場合は危険がはらむようになりますし、ゴミの分別が厳しい昨今、捨てやすさにも
配慮して、当社は釘の使用は避けるようにしています。

今後、様々なニーズに応えられるよう、さらに技術を向上させ、シェアを伸ばしていきたいと思います。当社の全国シェアはまだ1割です。とはいえ、競合他社が多い中で1割をキープすることは容易ではありませんが、これをもっとアップさせられるよう従業員皆で勤めていきたいと思います。
シェアが増加すれば、雇用が生み出せますから、萩市にも貢献できますね。


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