学園法人本願寺萩学園 認定こども園萩幼稚園

  • 先人

園長 河名 哲雄さん

会社名
学園法人本願寺萩学園 認定こども園萩幼稚園
高校で敷かれた人生のレール そして挑戦

 高校在学中、祖父が亡くなる前日に、「僧侶になれ」の一言で私の職業は決まり、大学4年間は京都で、その後2年間大阪で学びました。決められたレールの上で、一時、都会に留まりたいといったような気持ちが生まれることもありましたが、自らを振り返ったとき、地域の方々に様々な角度からお声かけをいただき、支えられたこと、育ててもらってきたことに改めて気づいていく中で、自然と帰郷を望む気持ちがこみ上げてきました。

 最初の就職先は、お寺をとりまとめる事務局です。多くの方は、ご存知ないかもしれませんが、浄土真宗という宗派だけで、県内に633件のお寺があり、それを取りまとめる事務局がございます。私はそこの職員です。現在、学校法人の園長をしておりますが、こちらも異動先です。通常保育園や幼稚園では、経験者がそのままキャリアアップして園長を務める場合が多いと思いますが、私の場合は突然の異動でしたので、打診があった当初は、全く経験も無く、資格も無く、正直戸惑いましたが、多くの縁も感じました。亡くなった祖父も同園の園長を務めていたこと、自らが萩出身であり同園を卒業した第一生であること、また、叔父が九州のほうで同様の職に努めていたこともあり、相談に伺ったところ、「本当にやりがいのある仕事だから引き受けてみなさい」と勧められたことも後押しになりました。色々頭の中で整理していく内に、萩で子どもを育てていくことはとても大切なことなのではないか。挑戦する価値がある。と考え、お話を引き受けました。

 久しぶりに訪れた園は、卒園当時私を世話してくれた先生が、まだ在籍しておられ、「哲っくん」なんて声をかけられたりして、懐かしいような恥ずかしいような複雑な気持ちになりました。

子どもと接する時間を増やすための徹底した効率化

 法人自体は、設立から約60年。仏様のおしえに基づき、命の尊さや感謝の心を育くんでいます。萩幼稚園単体では、幼稚園教諭は正規職員9名、臨時職員9名、給食調理担当が4名、バス運転手が3名、事務が1名、私を含め、27名となります。

 資格も全く持たない。子どものことも分からない。学校経理も分からない。完全に未知の世界ではありましたが、百戦錬磨の先生方の対応を見習いながら少しずつ覚えていきました。私自身仏様の教えを子どもたちの前でお話することがあるのですが、当初は言葉の選び方が分からず、想いが伝わらないこともありました。そのようなときは、子どもと一緒に遊びました。一緒に遊ぶ中で、どうしたら気が引けるか、どうしたら伝わるか、感触を確かめながら少しずつ距離を縮めていきます。同じ3歳児でも月齢で全く違います。ひとりひとりの個性でも全く違います。先生方は通常業務だけでもあまりにも忙しく、あまりにも時間が無いことを、身をもって知りました。

 ある程度業務に慣れてきた頃から、私自身が出来ることとして取り組んだのは、徹底した業務効率化でした。身近なところでIT化も積極的に勧めました。日報はonedriveを、連絡はLINEを活用し、職員間のやりとりに係る無駄を徹底的に省き、大切な引継ぎ事項は、16時からの終礼に一局集中させました。また、職員間の連携がある程度築けてきたところで、教育的効果についても見直すために、「年間テーマ」を決めるために全職員参加型ワークショップを行いました。限られた時間ではありましたが、テーマを「聞く」に定め、約束ごとを1つ決めました。やることは簡単で、背筋を伸ばして座っている絵を見せながら「はい背筋をぴーーーん」「足をぴーーーん」といった感じで、「聞く姿勢」を提示。出来ている子を「かっこいいねー」と褒めながら、遊ぶ感覚で身に着けてもらいました。子どもたちの向き合う姿勢や、職員の目的意識が高まり、成長度合いも飛躍的に伸びました。  

 もっと効率が図れたら、もっと先生方に子どもたちに接してあげる時間を確保できる。それを念頭に、今後も挑戦を続けます。

おかげさま ありがとう

 効率化に努める一方で、やはり一番大切にしていることは、命の大切さであり、心の部分です。子どもたちには1日1回「ありがとう」を言いましょうと、伝えています。「おかげさま」を伝えてあげたいんです。今生きていること、元気でいること、給食を食べられること。それは色々な方に支えられていることを知ってもらいたいです。足元の影のように、ごはんを作ってくれるお母さんや、働いてくれているお父さんが影のように頑張ってくれているからこその自分であるということ。人として生きる上で、3~5歳の間に、いかに育んでいけるか。いかに綺麗な土台を築けるかが、とても大切になります。

 そういった点において、萩という土地は、子どもを育てやすい環境ではないかなと感じています。都会は、人工の公園に囲まれて、本当に可哀想だなと思っていましたが、この町には四季折々の自然と、豊かな町並みや食文化がそろっています。そのような環境のありがたさを伝えるために、萩幼稚園では、「ふるさと学習」という時間を設けています。3歳は指月山でどんぐり広い、5歳は城下町に散策し、「なぜ萩に夏みかんがあるの」といったところまで学び、学んだ後は、夏みかんの生絞りジュースを飲んだりもします。意外と保護者の方も知らないことなので大変喜ばれています。また、卒園前に、萩焼の陶芸体験もやって、それを卒業記念にお渡ししています。こちらは親御さんのほうが本気になられますね(笑)。

 0歳~5歳。140人の育つ環境を保つために、一緒に働いていただく方の条件を挙げるとすれば、「子どもが好き」ここに尽きますし、経営者としては「どういった子どもが育てたいか」について聞かせていただきます。私自身は、感受性が豊かで素直な子どもを育てたい気持ちがありますので、しっかり基本的な部分の意識のすり合わせを行えば、あとは雑談で十分コミュニケーションがとれますね。

子ども中心に物事を考えるということ

 保護者の方の間でも、「先生方がいつも元気なので、園が本当に明るいですね」と言われるくらい、うちの園では組織内でいさかい一つなく、一丸となって取り組むことができています。一人困っている子がいれば、皆で見ていて、皆で対応していきます。おかげさまで、旦那さんの転勤に伴って退職される方はあれど、それ以外の方は、皆さん産休・育休をとられながら、継続して働いていただいています。最近欠員が出ましたが、5年ぶりに1名の求人を出しました。

 そのような恵まれた環境を維持向上するためにも、様々な努力も重ねています。職員の資質向上という点では、先生方には、「子どもがどのように育っていくか全て見通して保育に接してください」、「ただ行事をこなすのではなく、その行事を通じてどのように育っていくか、ひとりひとりの目標を定めてください」と伝えています。また、積極的に外へ出ていくことも促しています。研修は、園内研修はありますが、異動の無い職場なので、園外研修を積極的に受講していただきます。加えて、休日には、どんどん休みがあれば遊びに行ってください。と、伝えています。何故なら、職員が感受性豊かでなければ、子どもが感受性豊かになるわけがなく、道端の花を「綺麗」と感じられる職員でなければ、子どもも花の前を素通りしてしまいますから。

 加えて、自助努力ばかりに期待していても、職員の方の負担が大きくなってしまいますから、昨今問題になっている「メンタルヘルス」等についても、月1回セミナーを受ける場を設けています。昨今の情報社会に比例して、保護者の方々のニーズも高まっていますので、様々な局面に対応できるような研修も取り入れております。

 そして忘れてはいけないのが親御さんのケアです。子育てに悩んでおられる方の相談をうけることも多くあります。「わが子の育ちでいいのか」一人っ子の場合は、ほかの子を知らないので当然です。集団になじめない、ごはんを食べない。等、悩みは尽きません。うちの担任は百戦錬磨です。本やネット上をみても解決できない悩みについては、子どもたち一人一人に合わせて試行錯誤しながら最善の方策を探すしかありません。正解は無いので、最適化しかないのです。

 今後の展望について、企業様のように明確に数値化は難しいですが、豊かで素直な心を持つ子どもをずーっと先の100年先まで育める職場にしていきたい。職員が変わっても、同じように育てていける環境づくりをしていきたい。そう考えています。


戻る

萩のお仕事を紹介しています。就職希望の方はもちろん、人材を募集したい方もご活用ください。

求職者の方

※本サイト内で企業とコンタクトをとるためには、登録が必要です。

求人企業

※求人を募集するには、登録が必要です。